金曜日。渋谷で待ち合わせ。
- 2015/09/27
- 04:27

金曜の夜。早めに仕事を切り上げて、妻が待っている渋谷の居酒屋へ急ぐ。僕たちはお腹がすいていたものだから、一気に注文して一気に食べてしまった。食欲が満たされたあとの充実感。そして差し向かいには、妻がやさしく微笑む姿がある。いつも思う。こんなにしあわせな毎日でいいのだろうか。しあわせ過ぎるほど、しあわせだ。「どれぐらい愛してるの?」と妻が訊ねる。どれぐらいって・・・君と一緒なら、食事も美味しくなるし、...
つづき 3
- 2015/09/26
- 19:31
上京する前日か、前々日だったと思う。僕は彼女の家に行った。彼女は家から出てこなかった。近くの公衆電話まで行って、電話をかけた。せめて話だけでもと・・でも電話にもでなかった。僕は彼女の家の前でひとり。彼女が家から出てきてくれるのをひたすら待った。春だというのに、さすがに夜は寒かった。2階の彼女の部屋から灯りと人影が見えた。僕は彼女が出てきて会って話をしてくれると思って、ひたすらに、ただひたすらに、彼...
つづき 2 大学には受かったけれど
- 2015/09/26
- 12:32
大学には受かったけれど、僕は失墜のなかにいた。僕が合格して、妻が落ちてしまったからだ。おめでとうの電話を最後に、彼女からの連絡は途絶え、手紙を書いたが返事もなかった。彼女は京都の名門大学に進学が決まっていた。東京と京都、500キロの距離は若い僕たちにとって果てしなく遠い距離に感じられた。...