セフレとの再会 3

窓の外には午後がある。
その午後は、空間いっぱいに雨を持っていた。

駅前のカフェ。
僕は約束の時間より早く着いた。
窓側の席に座って、飽きるともなく雨に濡れた街の景色をながめて過ごした。

やがて彼女が来た。
手渡した書類に目を通して、商談は30分足らずで終わった。

「ほんとうは、好きだったのよ」
なんの前触れもなく、彼女はそう言った。

彼女と交わった大学時代の、ほんの数年間のなかで、
あなたとは恋愛感情はないわ、とさっぱりとした態度をとっていたのは彼女自身であり、
司法試験に向けて猛勉強をしていた彼女にとって、僕の存在はストレス解消の道具にしかすぎないはずだった。

「38年ぶりの告白か？」と僕は笑った。

「横浜は長いのか」
「うん、かれこれ20年よ」
そんな会話のやりとりが続いた。


ふと外を見る。
窓辺に映る景色は、道路や街の路樹、傘をさして歩く人が
本来ならバラバラに存在しているだけだが、
雨が降っているおかげで、ひとつのトータリティを持っていた。
街の風情は、雨がうまくひとつにまとめあげていて、
そういうことをやってしまう雨というものは、ひょっとしたら芸術ではないかと思った。

「横浜に美味しい焼肉屋さんがあるの」
「いいお仕事を頂いたお礼に、わたしがご馳走するわ」
「今度、夜、空けておいてね」
と彼女は言った。